世界有数の美食の街として知られるスペイン・バスク地方のサンセバスチャン。観光客はもちろん、現地の人をも虜にしているのが「バスクチーズケーキ」です。

サンセバスチャンの老舗バル「ラ・ヴィーニャ」のバスクチーズケーキは絶品で、地域を代表するスイーツとしてたくさんの人達に愛されているそうです。

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「バスクチーズケーキ」は、ベイクドチーズケーキ、レアチーズケーキ、スフレチーズケーキ…どれにも分類されない、唯一無二のチーズケーキとして注目されています。

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1958年の創業から「ラ・ヴィーニャ」は代々家族で営まれており、家族や親類のみしか厨房に入ることが許されず、長年そのレシピは門外不出とされていました。

世界中のパティシエがあまりのおいしさに憧れを抱き、製法を学びたいとアプローチを続けてきましたが、これまで誰一人としてレシピを教わることができませんでした。

そんな門外不出のレシピを、世界で唯一知ることが許され、本場の味を忠実に再現しているのが、2018年7月に東京・白金にオープンしたバスクチーズケーキ専門店「GAZTA(ガスタ)」です。

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店内に入ると、ディスプレイに並ぶのはバスクチーズケーキのみ。大きいサイズは15cm、小さいサイズは8cmの2種類のサイズから選ぶことができます。

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ねっとり&クリーミーな口溶けに心奪われる

バスクチーズケーキは、ひと口目にはずっしり濃厚なチーズのインパクトがあり、中までフォークを入れるとねっとりクリーミーな口溶けに思わず頬が緩みます。

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さらに、香ばしく焼きあげられた表面のほろ苦さと、濃厚なチーズがマッチし、「半分だけ」と自分とかわした約束を忘れてしまうほど、軽やかな食べ心地です。今まで食べてきたどのチーズケーキとも違う、クセになる味わいやクリーミーな口溶け、「もう一口」とついつい食べたくなる秘密はどこにあるのでしょうか。

本家直伝の「セオリーを覆す、驚きの配合」

「通常ケーキをつくるときにはセオリー、つまり確率された方法や理論があります。バスクチーズケーキのレシピを学んだ時、ケーキづくりのセオリーを覆す配合に、目からウロコでしたね。おそらく教えてもらわなければ一生辿り着くことはできなかったと思います。」と本家からレシピを継承した戸谷尚弘(とだになおひろ)シェフ。

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残念ながら詳細な製法については企業秘密とのことでしたが、そのルーツはチョコレートケーキの伝統的製法を、チーズケーキに取り入れるところから始まったとのことです。

また、独特の食感は焼き方に秘密があります。オーブンから焼きあがると金型からあふれんばかりの生地が。実は、内側はとろとろの状態のままオーブンから取り出されています。

次に、下に空気孔の開いた専用の木製の板の上にバスクチーズケーキを並べ、ゆっくりゆっくりと冷ますことで、中までじんわり予熱が入っていきます。

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木製の板は金属に比べ、熱の伝わり方が穏やかなため、中をしっとりクリーミーに仕上げることができるそう。なんと大きい15cmサイズのものは6時間も板の上でゆっくり冷ましているそうで、大切に時間をかけてひとつひとつ丁寧につくられていることが伝わります!

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お召上がり頂く際は、一度冷蔵庫でしっかり冷やして10〜15分ほど常温に戻すのがおすすめ。独特の二層の食感と、チーズのコクを楽しめます。

「ルールがないところがいい」現地のポリシーを受け継いだ先に目指すもの

現地サンセバスチャンではバスクチーズケーキをデザートとして食べたり、ちょっとしたお酒のつまみとして塩をかけたり、なんとシェリー酒をかけて食べる常連のお客さまもいらっしゃるそう。

「ルールがないところがいい」という現地のポリシーを尊重し、ガスタでも戸谷シェフが厳選したトッピングを販売されています。

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フランスのブリュターニュ地方の岩塩や、オーガニックのメープルシロップをかけると、また違った味わいが楽しめます。お客様さまが自由に食べ方を楽しむことを、シェフも楽しまれているそうです。

「流行」ではなく、「文化」として根付くこと

地域を代表するスイーツを創り出すことを夢見た「ラ・ヴィーニャ」のシェフ。地域を愛し、地域の魅力を一人でも多くの人に知ってもらいたい、という想いがガスタにも引き継がれているようです。

よく見るとお店のロゴにはバスク文字があしらわれており、商品だけでなくお店全体でバスク愛を発信する場所として、現地を感じて欲しいというシェフの想いが反映されています。

店名の「ガスタ」は、バスク語でチーズを意味し、素材の産地を大切に思うシェフだからこその、ネーミングです。由来を知ると、バスクチーズケーキのおいしさが今にも蘇ってきて「次はいつ来ようか」なんて思いを馳せてしまうのでした。

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バスクチーズケーキは現地の生活に密着し、シンプルなスイーツだからこそ、時を超え、研ぎ澄まされ、洗練されてきました。シンプルなひとつの商品の先に、食文化や風土が垣間見えると、とてもワクワクさせられます。

そしてその背景を感じられるからこそ、流行として終わるのではなく、食文化として根付く。次の休みにはバスクを旅しよう。そして現地でバスクチーズケーキを食べたらまたその思い出話をしに是非ガスタを訪れたい。

前回のメゾン・ダーニに続き、戸谷シェフが手掛けるバスク地方のスイーツガスタを取材させていただきましたが、戸谷シェフはすでに次の展開を企画されているとのことです。噂では次はフランスのある地方のスイーツ。日本ではまだ馴染みがない、本場の伝統的なスイーツのおいしさと食文化を日本に届けてくれる戸谷シェフ。次の展開が今から待ち遠しいです。

SHOP INFOMATION

NAME GAZTA(ガスタ)
URL https://valuet.co.jp/maison-b/gazta/
ADDRESS 東京都港区白金1-14-10-1F
TEL 03-3440-7495
OPEN 9:00~19:00
CLOSE 月曜日定休(※月曜日が祝日の場合は、翌日火曜日に振替)

※他、臨時休業する場合があります