はじめまして、フォトグラファーの本多純と申します。

スイーツは、美味しさだけではなく、見るだけでもうっとりするくらい美しい食べ物ですよね。そんなスイーツの持つ美しさを写真で表現するスイーツフォトグラファーとして活動しています。

私からは、パティシエのみなさまによる美しいスイーツたちと、スイーツの美しさを創り出すストーリーをお伝えしていきます。

第1回は、東京・赤坂にある「Paâtisserie & Café DEL’IMMO(デリーモ)」。

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今回お話していただいたのは、シェフ・パティシエの江口和明さん。これまでデカダンス・ドュ・ショコラやデルレイといったチョコレートの専門店で活躍されてきたショコラティエでありながら、2013年12月にオープンしたこちらのお店では、たくさんの素敵なケーキがつくられています。

まずは、このお店をつくられた経緯から教えていただきました。

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江口チョコレート専門店で売っているショコラは、1粒で300〜500円くらい。お客様からも、贅沢品のように扱われていました。ただ、私が修行していたチョコレートの本場ベルギーのように、もっとカジュアルにチョコレートを楽しんでもらいたいと思い、「ケーキ」という形でチョコレートを使うことにしました。なので、デリーモのケーキは、全ての商品にチョコレートを使っているんです。

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これだけ色や見た目が違うのに、全部チョコレートが使われているんですね!

江口そうですね。それに、カカオの濃さによって味の違いをお客様に感じていただきたくて、メニュー表には、ケーキひとつひとつにカカオ含有量を記載しています。

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素材へのこだわりの深さを感じました。次にケーキの美しさの秘訣を教えていただきたいのですが、ケーキのデザインはどのようにして決めていくのでしょうか?

江口インテリアや女性のファッションなど、自分の目にする素敵なものを見たときのインスピレーションからアイデアをもらって、それをケーキで表現することが多いですね。でもそのインスピレーションは、自分でも気づかないくらいの日常の出来事だったりするんです。先日、イースターのイベントで、可愛らしいニワトリの形のお菓子をつくったんですが、「子供が生まれてからデザインが変わったね」といろんな人から言われました(笑)。

アイデアが湧いても、現実の食材には旬があったりと、タイミングでぶつかることもあるのでしょうか。

江口モンブランは、お客さまに提供できるまでに1年かかりましたね。なかなか納得できるものができなくて。月日が経つと僕も味覚が変わって、季節が変わると栗の味も変わってしまって。ずっと追いかけっこのような状態が続いてました。

その間もずっとテストを?

江口そうですね。何度も試行錯誤しました。モンブランに限らず、どの商品でもテストを繰り返して、良いものになったら出すという姿勢は崩さずにいます。そして、その過程はデータ化して管理しているんです。

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江口これはチョコレートのチャートなのですが、チョコレートって、最初に風味の強いものや後から香りを感じるものなど、種類があるんです。例えば、バナナを使ったケーキにはバナナの風味を活かすチョコレートをチャートで探しながらテストすることで、両者が引き立つ良いムースに仕上がるんですよ。

なるほど!チョコレートに対する強いこだわりをまた一つ見つけました。ちなみに、季節によってレシピは少しずつ変えたりしているんですか?

江口そうですね。季節が変わると味覚も変わるので、同じケーキでもレシピを微妙に変えて、それに合わせてデザインも変更しています。もっと新しい良いアイデアが浮かんだらまた変えたり。年に3〜4回くらいは変更していますね。実は、店の名を冠したケーキ「デリーモ」も、これまでに(2年間で)4回くらいデザインを変えているんですよ。

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そうだったんですね! そういえば、チョコレートだけでなく、カフェのメニュー表もよくリニューアルされていますよね。これも雑誌並みのクオリティの高さで、ここまでこだわるパティスリーは他に見たことがないです。

江口(同席していた社内デザイナー宮崎さんを指して)これは彼女がディレクションしてくれているんです。

宮崎来月で10号目になるんですが、売り出したい商品が映えるよう撮影して、それに合ったデザインで冊子につくって、といったことを毎回やっています。

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「TAKE FREE」と書いてありますが…、これ、持ち帰れるんですか!?

宮崎そうなんです。でも今までお客様に伝わっていなかったみたいで、「TAKE FREE」のポップをつくるなどして改善しなければいけないなと、まさに検討しているところでした。それでも、オープン当初から集めてくださっているお客様もいらっしゃいます。

そうだったんですね! 載っている写真がどれも素敵なので、勉強のために持ち帰れないかなといつも思ってました(笑)。写真だけでなく実物のケーキももちろん素敵なのですが、デリーモのケーキの“ここ”は見てほしいというところはありますか?

江口ツヤ”です。ツヤのあるところと、ないところの差を見てほしいです。

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チョコレート菓子も、表面のツヤが美しいですものね。そのこだわりは、ショコラティエとしての経歴から来ているのでしょうか。

江口若いときの憧れからです。僕がパティシエを目指していたころは、周りの様々なお店がグラサージュでつやつやのケーキをたくさん出していて。当時はそういうのが流行ってたんですよね。

たしかに、つややかなケーキはもらったときの嬉しさや、食べようと目の前にしたときのワクワク感がありますよね。デリーモのケーキの中で、「見た目」で好きなものを教えてください。

江口うーん…。「オセロ」か、「シュークリーム ショコラ」。「デュオピスターシュ」も好きですね。言っていったらキリがないですね(笑)。

ありがとうございました!それでは最後に、ひとつずつケーキのご紹介をお願いします。

■ 『デリーモ』

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江口ヴァローナ社のドゥルセというチョコレートが出たときにつくったもので、甘いビスケットのような味がする凄い濃厚なケーキです。ドゥルセのムースの中に、コーヒーとドゥルセのクリームが入ってます。

チョコレートというより、バターのようなミルキーな濃厚さを感じます。

■ 『デュオピスターシュ』

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江口ホワイトチョコレートとピスタチオのムースの中に、ベルガモットとグリオットチェリーのジュレが入ってます。私は、ピスタチオがすごく好きなんです。

中のジュレがとても爽やかな酸味で後味がすっきりしてます。これから暑くなる季節に嬉しいケーキです。

■ 『ホワイトカカオ』

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江口ペルー産のホワイトカカオでつくったムースと、中にはカカオのパルプを使ったゼリーが入っています。パルプをケーキに使っているのは他のお店にはないと思います。

口に入れた瞬間に広がるチョコレートの風味がすごく強いです。ものすごいカカオ感。

■ 『シュークリーム ショコラ』

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江口クッキーシューの中に、チョコチップの入ったチョコレートクリームが入ってます。チョコチップは最強ですよね。昔の子どもの頃の味というか。

柔らかなクリームの中に、パリパリとしたチョコチップの食感が気持ち良いアクセントです。

江口さん、貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!

 

スイーツ撮影のワンポイント ①一番気になる部分を残してキリトル

被写体、スイーツや料理の皿の全体を写してしまう写真というのは、パッと見ですぐに伝わり切ってしまって、見る人の興味をひきにくい、印象に残りにくい写真になってしまいます。

あえて一部をフレームアウトして見えなくすることで、写真を見る人に「全体はどんな姿・形になってるんだろう…」と想像させる余地をつくることで、印象的な写真に一歩近づけることができます。

テーブルフォトでたくさんのお皿(お料理)を並べて撮るときも、端の器や料理は一部が見切れるくらいに撮るのがポイントです。