第1回 マムズ アップル & ティー
第2回 ネイバーフッド アンド コーヒーについて
第3回 クレーム ブリュレ ラテ
第4回 オレンジブラウニー、レモンケーキ、クレーム ブリュレ、青森産りんごのアップルパイ with アイスクリーム
第5回 シェイクン オレンジ ラズベリー
第6回 バナナ チョコレート & アイスクリーム
第7回 キャラメル アーモンド クッキー、アーモンド クロワッサン
第8回 カスタマイズメニュー
第9回 おいしいコーヒーの淹れ方

とにかく歩いて街の空気を感じる。

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ネイバーフッド アンド コーヒーの店舗デザインに関する魅力を知るため、今回は駒沢1丁目にやってきました。なんといっても特徴的なのが、入り口付近がワンちゃん連れのお客さまで賑わっていること! びっくりしました。ここは山内さんの設計ですか?

山内そうです。ネイバーフッドの店舗デザインを統括しながら、自分でも直接担当した店舗ですね。このエリアはワンちゃん連れの方が多くて、日本でもペットとの暮らしを先進する地域なんです。もともとワンちゃんが入れるお店はたくさんありますが、同じように「ワンちゃんOK」ではつまらない。もう一歩踏み込んで考えてみよう、と。

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道路に面したテラスで開放感がありますね。リードをつなぐフックもたくさん。通常の席との間仕切りは全面ガラスで広々しているのがいいですね。

山内ワンちゃんは中には入れませんが、フックにつないでコーヒーを買いに行く間も様子が見えて安心できるようにしたんです。また、椅子やテーブルも可動域を広くしているので、ワンちゃん連れ同士の方のコミュニケーションがしやすいと思いますし、ワンちゃんが落ち着く場所もつくりやすい。その様子が外からよく見えるので、お客さまがお客さまを呼んでくださっている状態ですね。

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もちろん、このようなテラスがあるのはここだけですよね?

山内そうですよ! 出店計画が立ち上がると、駒沢の街をチーム全員が歩きまくって、街の空気を肌で感じ、共有します。私たちデザインチームだけでなく、マーケティングや営業も歩きます。

どんな嗜好の人が住んでいるのか、特徴はなんなのか見極めるために、例えば「ワンちゃんが多いな」というだけではなく、「どんなリードをつけているか」「散歩するときの服装はブランド物かオーガニック系か」というところまでしっかり見ますね。

スターバックス通常店の場合は都市部なのでさまざまなデータにリサーチをプラスオンすればいいのですが、ネイバーフッドは住宅街にお店を構えるので“ライフスタイルを知る”ことが非常に重要です。

そこまでチェックするんですか。つまり、店舗にはその街“らしさ”の要素を加えていくというわけですね。

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デザインに街のストーリーを。

リサーチ後、ネイバーフッドならではの試みはあるんでしょうか。

山内いちばん特徴的なのがネイバーフッドネームという“表札”があること。駒沢なら、公園が近いので木と人の距離感を表現したアイコンがあります。

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なんと、ワンちゃんも描かれているんですね!

山内玉川なら『川』」「初台は『ビル群』」みたいな象徴的なポイントをデザインで表現します。入り口にわりと大きくつけているんですが、全体のデザインになじむように工夫しています。

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スターバックスの通常店もそうですが、意外とデザインにはバリエーションがあって、でも絶対的にスターバックスなのがすごいなあと思います。

山内まさにそれがコンセプトですね。特にネイバーフッドは、よりベースのデザインから自由度が高くて、スターバックスかどうかもわからないで入る方も多いでしょう。むしろ、ネイバーフッド=隣人として街に馴染む方を優先していますから。

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店内のインテリアも各店舗でテーマが違うんですね。

山内結構大きく違いますね。ネイバーフッドでは、街が持つストーリーをデザインに組み込んでいきたいんです。たとえ誰も気づかなくても(笑)。

例えば駒沢公園は、東京オリンピックの前は名門ゴルフクラブだったんです。そこからヒントを得て、お店の象徴であるカウンターは当時のゴルフクラブに使われていたヒッコリーの木材と、グリップに使うレザーを組み合わせています。

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それは気づかない(笑)。でも確かに美しいカウンターです。入り口のドアなど、レザーは随所に使われていますね。すごく手に心地いい。

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山内「この木材はなに?」「ヒッコリーなんです。実は……」という会話の展開があればいいな、と、そういったストーリーはパートナーがお客さまにきちんとお話できるようにしています(※スターバックスでは、従業員を“スタッフ”と呼ばず、“パートナー”と呼びます)。

それから、ネイバーフッド全体での大きなテーマがあって、それは“レイドバック”で“インパーフェクト”であること。

それはメニューのお話でも何回か出てきました。ハンドクラフト感を出すため、ぴしっと整えすぎない、と。

山内まさにメニューでもデザインでも同じです。一見整えているようで、実はダクトをあえて隠さなかったり、大きなテーブルの椅子は形状をあえて不揃いにしたり。

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今でいうとハロウィンの飾りがあちこちにありますが、これは?

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山内完全にパートナーのアイデアですよ。チョークアートなんかもすべて。駒沢のお店だと、バリスタのすぐ横に大きめのカウンターを設けて、セミナーなどを行えるようにしています。その内容や告知も基本的にバリスタたちが決めていますね。

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すごくおしゃれなんですけど、もしかしたらすごく頑張ればマネできるかも、というラインが絶妙だな、とも思います。

山内あ、そこ、狙ってますね。ネイバーフッドには「友達の家にいるみたい」というコンセプトがあって。一応ここにある家具はオリジナルやセミカスタムなどなんですが、「買いたい」「どこで売ってますか?」という声も多くいただきますね。

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家を建てるときに「この空間まるごとお願いします!」って言いたくなるくらいです。次の街のお店を見るの、すごく楽しみになりました。ありがとうございました。

■ 教えてくれた人

山内朗史さん

スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社店舗開発本部 店舗設計部 コンセプトチーム。一級インテリア設計士。設計事務所で働いたのち、スポーツブランドにて店舗設計だけでなく、マーケティングやブランディングを身につける。現職は4年目。

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