こんにちは、CAKE.TOKYO編集部の平野です。
CAKE.TOKYOを通してこれまで400以上のお菓子と、200人以上のお菓子をつくっている方たちにお話をお聞きしました。
そして、これまでに公開した記事は、なんと、450記事をゆうに超えました。他のメディアと比べると、更新頻度はそれほど多くはないのですが、たくさんの想いが詰まったインタビューコンテンツが、このメディアには詰まっているのです。
どのお菓子もパティシエにとってひとつひとつ強い思い入れがあり、おいしさだけでなくストーリーにもこだわっています。だからこそ、毎回話を聞くたびに「このお菓子ってこんなにおいしくてね…」とか「ここ知ってた?ここの〇〇がすごくおいしいから今度行かない?」なんて、自信を持っておいしいと言えるものだから、ついつい誰かを誘い出したくなったものでした。
今回は去年に引き続き、年末にかこつけて、2017年に僕が取材したり立ち会って話を聞いたお店の中から、個人的に思い入れのあるお店をまとめてご紹介します。コメントが長いものばかりですが、それは愛だと思ってくださいね。
1)FLOTO / 参宮橋
取材したときに食べて感動したジェラート屋さん。素材選びから内装、インテリアまで徹底的にこだわり、ひとつひとつ工房で手づくりしている「FLOTO」のジェラートは、まさに“記憶に残る”味でした。
レモンは愛媛・大三島の花澤家族農園、メロンは熊本の生産者グループSUN-Q、ピーナッツバターは千葉の九十九里町のHAPPY NUTS DAY社、ブルーベリーは北海道の帯広ときいろファーム……などなど、できるかぎり顔のわかる生産者や信頼できるメーカーから取り寄せた素材は、じんわりとそのおいしさを伝えてくれます。
ただ、場所が参宮橋にあり気軽に行くのが難しいので、休みの日に行きたいと思っています。ちなみに、コーンも工房でひとつひとつ焼いているほどのこだわりよう!
記事はこちら ▶ 参宮橋にあるFLOTOのジェラートは、大地の恵みがぎゅっ。生産者とパティシエの想いがつまった、“記憶に残る”フレーバー。
2)ポムダムールトーキョー / 新宿御苑
僕がかつてお祭りの屋台で食べたことのある「りんご飴」は、“砂糖で塗り固められたあまーい飴”でした。しかし、「ポムダムールトーキョー」のりんご飴は、そのイメージをぶち壊してくれるほどのおいしさでした。
りんごは、味がよく流通が安定している「サンふじ」を使用。飴部分を極力薄くすることで、パリパリした飴が口の中でりんごと一体化します。
さらに、取材で伺った話の中で、店主の池田さんが考える理念に共感しました。「りんご飴は、理想の居場所をつくるためのきっかけのひとつ。ゆくゆくは人と人とが連鎖して影響を与え合っていく場所をつくりたい」と話してくださった池田さんの眼差しがキラキラしていました。
りんご飴のこだわりはもちろんのこと、池田さんの生き様を垣間見たような感じがして、これこそ取材の醍醐味だなぁと思いました。これからも機会を見つけて買いに行きたいお店のひとつです。
記事はこちら ▶ 日本初りんご飴専門店「ポムダムールトーキョー」。店主池田さんがその先に目指す、人と人を繋ぐ場。
3)kiki / 白金台
八芳園で結婚式を挙げられるお客さまのために引き出物用のオリジナルチョコレートを企画開発したことから生まれた「kiki(季季)」。桜、竹炭、紫蘇、酒粕など、春夏秋冬の食材を使った一口サイズのものが8種類。そこに、期間限定の旬の味も加わっていくというバリエーションも楽しいチョコレートです。
印象に残っているのは、今回話してくださった高橋さんと石橋さんが、それぞれのフレーバーについて楽しそうに語ってくれたこと。ひとつひとつ生産者の元に足を運んで関係を築いているからこそ、全てに思い入れが強いのだなと感じました。
3個/8個セットは、全種類の中から指定の個数を選ぶことができるので、誕生日のプレゼントにもぴったり。相手のことを考えながら好きそうなフレーバーを選ぶのも、プレゼントの醍醐味です。ちなみに僕は、会社の先輩の誕生日プレゼントに渡しました。個人的に好きなフレーバーは「酒粕」です。
記事はこちら ▶ 日本全国の旬の食材を一粒に濃縮!八芳園がつくる四季を感じるチョコレート「kiki」に込めた情熱とは。
4)森彦 / 札幌
別件での北海道出張に合わせて取材した記事です。「森彦」の代表・市川さんに車で案内をしてもらいながら、訪ねた森彦の店舗。同行しながら話を聞いた彼の哲学が、未だに思い浮かびます。
「長年愛されるのは、“商道徳”のあるお店」「おいしい珈琲をつくりたいなら、おいしい珈琲に出会うこと」「北海道で焙煎する珈琲が一番おいしい」……
などなど、話を聞けば聞くほど、コーヒーへの愛があふれてくる話ばかりで、1日中楽しくて刺激的で、今でも昨日のことのように鮮やかに思い出されます。
「僕はコーヒーカルチャーが大好きなんです。そもそも、珈琲にリスペクトしているんですよ。今思えば、お店をつくるときにも、コーヒーカルチャー自体へのオマージュなんです。珈琲が大好きで本当に素晴らしいと思っているので、その想いをどうやったら他の人にも伝えることができるのか。いつも考えています」
彼の哲学を体感してしまうと、どのお店も違うコンセプトなのに、根本が同じなので、森彦がつくるなら…と、札幌に行くたびに足を運んでしまう。札幌に行くたびに足を運びたくなるコーヒーショップのひとつです。
記事はこちら ▶ 「珈琲なら一生かけてもいいと思えた」 森彦代表市川さんと珈琲について話した濃密な1日間。
5)アンリシャルパンティエ / 銀座
ショートケーキ特集で一番「おいしい!」と感じた、「アンリシャルパンティエ」のショートケーキ。ちょこんとのった3つのいちご、オリジナルブレンドの生クリーム、鮮度のあるスポンジ。スポンジと生クリームとスポンジの黄金比率は、1:1:1。商品名の「ザ・ショートケーキ」という名前をつけて「ショートケーキの王道をつくっていくぞ」という意気込みを感じるショートケーキでした。
話を聞いてみて分かったことですが、アンリシャルパンティエほどの大きなブランドでも、クオリティを上げるため、分業制ではなく、ひとりの職人がひとつのケーキを最後まで担当するのだそう。おいしいケーキを届けるためのこだわりを垣間見たような気がしてうれしくなりました。
記事はこちら ▶ 目指すは“記憶に残るショートケーキ”。アンリ・シャルパンティエ代表作「ザ・ショートケーキ」の裏話。
6)アラボンヌー / 赤坂
赤坂の路地裏にある、家族で営む洋菓子店「アラボンヌー」。代表作「いちごのショートケーキ」は、食のセレクトショップ「DEAN & DELUCA」からもラブコールが来るほどの人気商品です。素朴にシンプルに、という言葉通り、はじめて食べても「あぁ懐かしい…」と思ってしまいます。
お話を聞いた代表の坂本さんが、ケーキをつくるときにこんなことを話していて、すごくいいなぁと思いました。
「若いスタッフの子たちにもいつも言っているのは『自分のいちばん大切な人に食べてもらう気持ちでつくってください』ということです。そう思うと、まず、手が抜けなくなります。焼き時間を数十秒変えただけの違いに敏感になります。そして、そういう気持ちは、必ずケーキの仕上がりにも影響しますし、お客さまにも届きます」
顔が見えることのメリットは、ここにあるのかもしれないと思いました。この人たちがつくったケーキは、他のものと見た目は同じかもしれないけど想いがこもっていて、プラスαでおいしい。アラボンヌーはInstagramも定期的に更新しているので、フォローして見ていると楽しくなりますよ。
記事はこちら ▶ DEAN & DELUCAもラブコール。アラボンヌーの「いちごのショート」は、甘酸っぱくて懐かしい味。
7)wagashi asobi / 上池台
「wagashi asobi」は、すでにいろんな雑誌やWebメディアで取材されていたので、あえてしなくても十分認知があるんじゃないかと思っていました。でも、取材に行って直接話を聞くことでわかることもたくさんありました。
例えば、冷たいお茶をそっと淹れていれてくださり(取材は夏でした)、当時のことを思い出しながら丁寧に話をしている様子や、2人で掛け合いをしながらツッコミを入れていた様子。写真ではわかるけど、文章中には出てこない2人の信頼しあっているあたたかな関係がそこにはありました。今後は、商品だけでなく話を聞く人たちの温度感も伝えられるようになりたいと、話を聞きながら思ったものでした。
新商品の開発に時間や予算を割くよりは、自信をもっておすすめできるこの2つをどんどんブラッシュアップしていきたいと考えたからです。あとは、一度食べたらもう終わりではなく、2回目、3回目と買いに来ていただけるような魅力ある和菓子づくりを大切にしたいんです。
「ドライフルーツの羊羹」は、はじめて食べたときに感動しました。あんと、いちじくやドライフルーツの食感。食べた瞬間、自分だけじゃなくて他の人にも食べてもらいたい!と思いました。これを持ってお土産を渡しに行きたくなるというのも、分かる気がします。
記事はこちら ▶ 「wagashi asobi」が発信する新しい和菓子の可能性。「ドライフルーツの羊羹」と「ハーブのらくがん」が、世界から注目を浴びるわけ。
8)ナタ・デ・クリスチアノ / 代々木公園
「サクッサクで、おいしすぎる!!」というのが、「ナタ・デ・クリスチアノ」のエッグタルトを食べたときの最初の感想でした。パイ生地が、サクサクとした食感でかなりしっかりしているので、食べ応えも◎。バターの香りがしっかりと感じられて、おいしさがじわっとにじみ出ていました。
「しっかりしていながらも歯切れがいいような生地を目指しています。生地には2種類の小麦をブレンドして使い、オーブンも、高温で焼きあげています。そうすることで、食べ応えのある食感の生地ができあがるんですよ。(中略)また、うちでは軽めのバターに、玉子クリームには脂肪分の高い生クリームを使っています。(中略)結果的に、国産の素材をメインに使うことで、本場よりもリッチなエッグタルトに仕上がったと思います」
1個あたりの値段がそれほど高くないのにめちゃくちゃおいしいお菓子は、ついつい財布のひもがゆるんでしまいますね。
記事はこちら ▶ ポルトガル式のエッグタルトを日本の良質な素材で。「ナタ・デ・クリスチアノ」のエッグタルトは、本場よりリッチな味わい。
9)ケンズカフェ東京 / 新宿御苑
1個3,000円、ネット販売はしないというビジネス戦略も話題で、ビジネス系のメディアでも数多く取材されている「ケンズカフェ東京」。お忙しい中、代表の氏家さんに話を聞きました。
「冷蔵庫で冷やすと生チョコ感覚、レンジで軽く温めると内部がととろけてフォンダンショコラにと、温度によって変わるさまざまな食感と口溶けを楽しんでいただけます。実は、レンジで温める食べ方は、お客さまのブログから教わりました。最初は「レンジでチンするなんてもったいない!」と驚いたのですが、実際にやってみると本当においしくて……。今では公式サイトでもオススメさせていただいています(笑)」
レシピも公開しているのにもかかわらず、おいしさを真似できない理由は素材選び。ドモーリがオリジナル調合でつくったチョコレートを使用したり、バターはカルピスバター、卵は「昔の味たまご」など、使用する素材が少ないからこそ、こだわり抜いているのだと話してくださいました。
このインタビュー記事は、今でもGoogleなどの検索からの多くアクセスしてくださり、息が長く読まれ続けている記事のひとつです。
記事はこちら ▶ 新宿御苑前「ケンズカフェ東京」の特撰ガトーショコラが1本3,000円で、爆発的に売れるようになるまで。
10)AWORKS / 学芸大学
見た目が鮮やかな「レインボーチーズケーキ」に気を取られてしまうけど、きちんとチーズケーキに関して勉強をして、味もきちんとおいしい、「AWORKS」のチーズケーキ。
「もう本当に適当にやってきていて、なんとかここにいるっていうのが基本にあるんです」と、ひょうひょうとした口調で話してくださった、店長の船瀬さん。関西弁混じりで、時折冗談を交えながら話してくださる様子は、このお店の雰囲気を表しているかのようでした。
カラフルなチーズケーキ目当てに行くのも、もちろんアリ。だけど、それ以上に、船瀬さんがつくる新しいチーズケーキを食べてみたいっていうのも、一定数いるんじゃないかぁと思うんです。自分もそうです。
ただ、お店の厨房に立つのは基本的に船瀬さん一人なので、ときには期待に応える数を提供できないこともあるそうです。「絶対に食べたい!」というときには、朝イチ(11:30オープン)に訪ねてみてください。
記事はこちら ▶ 自分の感覚に身を任せて。学芸大学「AWORKS」が魅せるレインボーチーズケーキのひみつ。
2017年は週3更新ペースで記事を公開してきましたが、来年からは、少しペースを落として、取材記事を公開していこうと思います。更新はSNSで、お知らせしています。
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「おいしいには、ストーリーがある」。こだわりを持ったおいしいスイーツを提供しているお店が、どんな想いでつくっているのかその裏側の話を聞くべく、邁進していこうと思っています。2018年も、どうぞよろしくお願いします。